[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ってか、東郷は「宮古湾海戦」では春日丸に乗船していたはずだ。おれたちは兎も角、俊春のことはみたのではないだろうか。
俊春は、「宮古湾海戦」で死ぬことになっていた野村の影武者となり、「青年の主張」をしまくっておおいに戦場をわかせ、笑いをとりまくったのである。
「東郷さんは、あの宮古湾の戦闘にも参加されていたそうです」
おれの心をよんだのであろう。俊春がいった。
「宮古湾では、機関部におった。botox額頭紋 わっぜおもしてか戦いだときいた。甲板でみるこっが出来んやったとが残念でなりもはん」
東郷が口惜しそうにいった。
なるほど……。
かれは「宮古湾海戦」では機関部にいて、甲板にはいなかった。だから、例の「青年の主張」はきいておらず、したがって俊春の姿もみていないわけだ。
「それは残念でしたね。だれもが面白い一戦だった、と話をしています」
しれっという俊春。
おいおい、面白いの意味がちがうだろう?って、ツッコみたくなった。
そのあと、俊春はおれたちのことを東郷に紹介してくれた。
出来る男である俊春は、副長のことを「 市村と田村は、部屋に入るなり大人一人がギリ横になれるほど狭いベッドの上に倒れこみ、眠ってしまった。
ベッドは二つしかない。
「副長、主計。床になりますが、これを敷いて眠ってください。ここなら安全ですし、今日はいい天気みたいだから揺れもすくないでしょう。ゆっくり眠れるはずです」
俊春が、副長とおれに毛布を差しだしてきた。
「ゆっくり眠る必要があるのは、おれたちではない。おまえだ、俊春」
副長は毛布を受け取ったものの、俊春にそう指摘した。
その通りである。
を床に落としてしまった。
そうだった。かれのトラウマは、こんな糞狭いところで丸出しでいやらしいフェロモン全開の副長といっしょにいるなんてことを、ぜったいに許さないだろう。
拷問以上のつらさを味あわせることになる。
「副長は、ここで休んでください。おれはまだ眠くないので、甲板で海を眺めています。いこう、俊春、相棒」
をうながした。
副長がなにかいってくるかと思ったが、とくになにもいわなかったので、そのまま船室をでた。
俊春と相棒が素直についてくる気配を、背中に感じた。
が、俊春は 船室から甲板に上がってみたが、海の風にあたろうっていう人はあまりいないようだ。腕や頭に包帯を巻いている人が数人、手すりにもたれて海を眺めているくらいか。
よくかんがえてみたら、この船に乗船しているのは傷病人ばかりである。そういう人たちが活発に動く、なんて元気や気力はないだろう。
無言のまま柵までいき、手すりを両掌で握った。
箱館湾を出航したときにはまだ薄暗かったが、いまはもう太陽が輝いている。潮風が頬をくすぐる。
この天気がつづいてくれれば、船酔いの心配をする必要はないだろう。
潮風を胸いっぱいすいこんだ。
まだはっきりとした自覚がない。
新撰組から離脱したこと、蝦夷から逃げだしたこと、そして、俊冬が死んでしまったこと……。
死んだふりをされたときにはすっかりだまされてしまったが、いまもまだそんな気がしないでもない。
いまにも海の中から飛びだしてきて、おれを心底びびらせてきそうである。あるいは、背後にそっと立って耳にふっと息を吹きかけられるとか。
かれならやりそうだ。
くそっ……。
涙が勝手にあふれてくる。
ロス感すらまだ感じられない。いや、感じたくない。
こんなことなら、いくらでもいじりいびりいじめてくれていい。悲しくつらく最悪な思いをするのであったら、そっちのほうがずっといい。
だから、戻ってこいよ俊冬。
肉体的には無理でも、霊魂とか憑依とかでもいい。
いや、やっぱり霊は怖いし憑依はなにをされるかわかったものじゃない。
うん。俊冬、やっぱそれはやめてくれ。
真剣にかんがえていて、はっとした。
慌てて振り返ると、俊春と相棒がじとーっとした目つきでこちらをみている。
「ごめん。マジ、ごめん」
まずは謝罪した。
「ってか、俊春。ほら、手すりにもたれろよ。ひどいの色は、悪いなんてものではない。さすがに疲れきっているのだろう。っていう以前に、死んでもおかしくない傷を負っているのだ。
そのとき、かれの眉間に皺がよった。
「ひどい?きみにそんなことをいわれたくないんだけど」
「揚げ足をとるなよ。ちょっといい間違えただけだろう?顔色っていいたかったんだ」
「いまのは故意だった」
「いいじゃないか……」
かれの