「頼まれても行かんわ。」
文はべーっと舌を出してから部屋を出た。
「先生,玄瑞。二人に向かってこう言うのは何やけど……本当にそそられんわ。」
くくっと笑って残りの酒を飲み干した。botox小腿
翌朝三津が目を覚ますと隣りの布団はすでに綺麗に畳まれて文の姿は無かった。廊下からすでにご飯の炊ける匂いが漂ってくる。
「寝過ごした!」
それ以前にいつの間に寝たんだとあたふたしながら身支度を整えていい匂いのする場所に向かってぱたぱた走った。
「文さんおはようございます!」
「あ!おはよーもっとゆっくり寝ちょったら良かったのに。入江さんはまだ寝ちょるよー。寝込み襲うなら今のうちよ。」
うふふと笑いながらさらっと寝込みを襲うなど口にするのは間違いなくいつしかの助平な子供四人のせいだろう。
「襲いません……。」
「そう?入江さん悦ぶと思うけど。あと何で吉田さん背負っちょるん?」
「え?あっ!癖で……。高杉さんに絡まれた時はこれが一番有効なんで。」
それを聞いて文が悪い顔で笑った。
「……高杉さんは本当に懲りん人やけん今度そっちに出向いて説教しちゃる。」
『文さん何か恨みでもあるんかな……。』きっと高杉の事だから余計な事は散々してきたに違いない。ただ文が乗り込んで来てくれたら楽しいだろうなと思って笑った。
朝餉の支度が出来た所で文はまたにんまりと何か企む笑みを浮かべた。
「二人で寝込み襲いに行こう。」
強引に引っ張られて入江の寝ている部屋に連行された。そしてそっと襖を開いて中を覗き見た。どうやら標的はまだ寝ているようだ。
音を立てないようにそぉーっと中に忍び込んで文は入江の寝顔を確認して指で丸を作って三津に向けた。
『何の合図なんやろ……。』
おいでおいでと手招くから静かに文の側に行った。
「三津さんここで寝転んで。そっとね。そぉーっと。」
小声で入江と向かい合って横になるように指示をされ素直に従い横になった。そして起こさないようにギリギリまで近寄れと指示をする。
それから文は入江の背後に回りその背中にピッタリとくっついた。
「九一さん起きてっ。」
耳元で囁やけば入江の目がハッと開いた。その目の前には三津の顔があって背中には柔らかい感触と温もり。
自分の置かれている状況を把握した入江は絶叫と共に飛び起きた。
「攻められるの好きとか言う癖に何で慣れちょらんそ?」
文は悪びれる様子もなくにまにまと笑いながら膳を挟んで正面でむくれる入江の顔を覗き込む。
「煩い。」
入江はふんと顔を反らした。文にかかれば入江もおもちゃになる。
「三津さんも一緒になって朝から何しよるんよ。」
流石に私でも怒るわと味噌汁をすすった。
「朝がアカンのやったら夜はいいんですか?」
「ぶふっ!」
味噌汁を吹き出した入江を文はけらけら笑った。
「夜もいけん!こんなくだらん遊び禁止!」
「何言っちょるん。三津さんも居る今,積年の恨み晴らさんといつ晴らすそ?」
文はふふふと笑って入江を見つめた。
『やっぱり恨みあるんや……。しかも高杉さんだけやなくて多分四人全員……。』
「九一さん,今までの悪事謝った方が身の為ですよ?」
「知らん!私は何もしちょらん!」
「はあ!?私の部屋に春画撒き散らしちょったんどこの九一さんやったかいねぇ?」
「文ちゃん!」
心当たりのある入江の九一さんは腰を上げて咄嗟に文の口を塞ぎにかかろうとしたがそんなものひらりと交わされた。
「まだまだあるけど……三津さんの前で言ってもいいそ?それとも毎日少しずつ報復受ける?」
三津には文の姿が裁きを下す閻魔様に見えたがこれは入江が悪いので助ける義理もない。