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項垂れる帰蝶に目をやりながら、信勝は遺憾そうに口を尖らせた。
「それもそうよのう…」
信秀は悩まし気に眉を寄せながら、暫し考え込むと、ふいに帰蝶に目をやった。
「姫君、そなた様は如何ですかな?」
「……」botox小腿
「このまま、ここで信長を待っていても結果は昨日と同じであろう。
姫君が望むのならば、このまま奥へ引き取っていただいても良いのじゃが」
「大殿、それではご一門の方々が黙っては…」
「事情が事情故、致し方ないであろう。案ずるな林、来てもろうた皆々には儂の方からお話し申す」
「されど、ご理解いただけますでしょうか?」
「理解もなにも、信長が尋常でない事くらい親類縁者は皆知っておろう。
“またか”と思われるであろうが、今さら驚かれはすまい」
「そのような悠長なことを…」
「──参ります」
信秀と秀貞の会話を遮るように、帰蝶ははっきりと申し述べた。
一同は驚きの表情で、サッと姫君の麗しい面差しに目をやる。
「参るとは…祝宴の場に出ていただけるという事ですか?」
信勝が訊くと、帰蝶は躊躇いもなく頷いた。
「婚礼の宴の席に花婿も花嫁もいないのでは、さすがに格好が付きませぬ。
私も宴に参列し、上座の席を一つ埋めとう存じまする」
「それで、まことによろしいのでございますか?」
「お恥をかくやも知れませぬぞ」
秀貞と勝介が心配顔で告げると
「恥ならば、とうにかかされております故」
帰蝶は微笑(わら)ってそう答えた。
帰蝶と信長の婚儀を祝う宴は、その日の暮れ六つ(18時頃)に、予定通り那古屋城の大広間にて執り行われた。
豪華に飾り立てられた上段の中央に、本日の主役である帰蝶。
その両脇に信秀、土田御前、信勝らが控え、下段には親類・一門の者たち。
更にその端には、美濃から随行して来た送り役の隊長が、婚礼の見届け人として、従者たちと共に祝宴に参列していた。
この日はわざわざ城外から能楽師たちが招かれており、宴が始まると同時に、彼らによる「高砂(たかさご)」の舞が披露された。
高砂は夫婦愛と平和を寿(ことほ)ぐ、祝言の席には相応しい演目である。
美しい謳(うたい)と舞に一同は終始笑みを漏らしつつ
「それにしても織田家は、何とも見目麗しい姫御前を嫁に迎えられたものよのう」
「ほんに。まるでなよ竹のかぐや姫のよう」
と、上段の帰蝶を一瞥(いちべつ)しては、口々にその美貌を褒めそやした。
しかし、そんな事を言われても帰蝶はちっとも嬉しくなかった。
言う彼らの顔や口元が明らかに引きつっているのだ。
祝宴が始まる前に、信秀から一同に言い訳じみた説明がなされたが、やはり婚礼の宴の席に新郎の姿がないのは異様であった。
まるで男雛の欠けた雛飾りような光景である。
先に行うべき祝辞や挨拶を飛ばして、いきなり能楽の披露から始めたのも、
この異様な雰囲気を少しでも紛らわそうという、家臣たちの提案によるものであった。
「……敵国に嫁いだというのに、見よ、あの淡々とした表情を」
「やはり蝮(まむし)の娘じゃ。気のお強い」
「美濃の間者の分際で…図々しい姫よ」
誰が言ったのかは分からない。
しかし称賛の声に混じって、帰蝶を罵る言葉が聞こえて来たのは確かだった。
帰蝶は思わず顔を上げ、下段の一同を眺めた。
「何かあった時庇えんやろが。」
「……すみません。」
初めて高杉の背中が頼もしいと思えた。三津は卑屈に考えた自分を恥じた。
そのまま高杉に先導してもらい,酒屋で酒を買った。
『あーなるほどな。』 botox小腿
高杉は三津の目的に納得した。それから散歩と称して訪れてのは宮城の墓石だった。酒を買った理由もこれだ。前に美味い酒を持って来いと赤禰に言伝ていたなと高杉は思い出した。
「宮城さん,あのね武人さんがそっちに行ってしまったんです。でも私達最期のお別れも出来てへんしお墓にも行かれへんから宮城さんに伝言お願いしたいんです。」
三津は墓に酒を供えて手を合わせながら喋りだした。高杉は隣りでじっと三津が喋るのを見ていた。
「そっちで武人さんに会えたら,ここのみんなは誰一人武人さんを疑ってないし,武人さんがおらんくなったのを悲しんでます。ずっと大切な仲間やからって伝えてもらえませんか?お願いします。」
三津はぎゅっと目を瞑って懇願した。それを見ていた高杉も同じ様に手を合わせて目を瞑った。
「宮城さん,武人はきっと凄い怨念抱えとると思う。俺らがそれをどうにかしてやろうと思っとる。やけぇそんなもん手放して楽になれって言ったってくれ。頼む。」
しばらく二人で必死に拝んだ。ひゅーっと風が吹いて二人で身を震わせた。
「……伝わりますかね?」
「伝わる。絶対伝わる。だって俺らは仲間やけん。」
墓石に真っ直ぐな視線を向ける高杉の表情は朝より断然すっきりしたように見えた。
「じゃあ今日の夜呑む分のお酒買って帰りましょうか。今晩は武人さんを偲ぶ会です。みんなで存分に武人さんの好きな所語り合いましょう。」
「ええな。てか三津さんそんな大金持っとるそ?」
「真面目に働いてましたし,特に使う事もなかったんで。」
それにこつこつと貯めて,文の家を出て暮らす家を借りる為の資金にしたかったんだ。この先何があるか分からないから,無駄遣いはせずに置いとくべきなんだろうが赤禰の為なら惜しまない。
二人は小さいながらも瓶を抱えて屯所に帰った。
「えっ酒買いに散歩?」
二人を出迎えた入江は高杉が抱えた瓶を見てどこからそんな金が出たと驚いた。
「三津さんが向こうで稼いだ給金を武人の為やって使ってくれた。」
「はい,ホンマは向こうで一人で暮らす家借りる為に貯めてたけど必要なくなったんで。」
三津は特に悲観的に言った訳ではないけど入江は悲しげな顔をしていた。
「そっか……。三津にそこまで思ってもらって武人さん喜ぶわ。」
そう言ってもらえて三津は満足げに笑みを浮かべた。
「今日は武人さんの為の宴会です。高杉さんそれ台所までお願いしますねー。」
「おう。何でも手伝うけぇ何でも言えよー。」
和気あいあいとした雰囲気で廊下を歩いて行く二人を見て入江は流石だなぁと笑った。
『晋作もすっかり手玉に取られて。』
朝の尖っていたアイツは何処に行ったと喉で笑う。でもその方が屯所内の空気はいい。その為にも三津は欠かせない存在になったなぁと思った。
三津はせっかく赤禰の為の宴会だから赤禰の好きだった物を用意しようと思ったけど,そう言えば食の好みとか知らないと気付いた。
『毎食ほぼ献立決まってたから何が好きやったとか知らんなぁ……。』
それが凄く寂しく思えた。三津が小さく溜息をついたのを見て高杉がどうしたと顔を覗き込んだ。
「あの……武人さんの好物を並べたかったけど私武人さんの好物知らんなって思って……。」
「あー。そりゃ俺も知らん。」
「えっそうなん?」
三津は意外だなぁと呆けた顔で高杉を見ていた。三津が物憂げな表情を浮かべた理由を知って今度は高杉が小さく息を吐いた。
「頼まれても行かんわ。」
文はべーっと舌を出してから部屋を出た。
「先生,玄瑞。二人に向かってこう言うのは何やけど……本当にそそられんわ。」
くくっと笑って残りの酒を飲み干した。botox小腿
翌朝三津が目を覚ますと隣りの布団はすでに綺麗に畳まれて文の姿は無かった。廊下からすでにご飯の炊ける匂いが漂ってくる。
「寝過ごした!」
それ以前にいつの間に寝たんだとあたふたしながら身支度を整えていい匂いのする場所に向かってぱたぱた走った。
「文さんおはようございます!」
「あ!おはよーもっとゆっくり寝ちょったら良かったのに。入江さんはまだ寝ちょるよー。寝込み襲うなら今のうちよ。」
うふふと笑いながらさらっと寝込みを襲うなど口にするのは間違いなくいつしかの助平な子供四人のせいだろう。
「襲いません……。」
「そう?入江さん悦ぶと思うけど。あと何で吉田さん背負っちょるん?」
「え?あっ!癖で……。高杉さんに絡まれた時はこれが一番有効なんで。」
それを聞いて文が悪い顔で笑った。
「……高杉さんは本当に懲りん人やけん今度そっちに出向いて説教しちゃる。」
『文さん何か恨みでもあるんかな……。』きっと高杉の事だから余計な事は散々してきたに違いない。ただ文が乗り込んで来てくれたら楽しいだろうなと思って笑った。
朝餉の支度が出来た所で文はまたにんまりと何か企む笑みを浮かべた。
「二人で寝込み襲いに行こう。」
強引に引っ張られて入江の寝ている部屋に連行された。そしてそっと襖を開いて中を覗き見た。どうやら標的はまだ寝ているようだ。
音を立てないようにそぉーっと中に忍び込んで文は入江の寝顔を確認して指で丸を作って三津に向けた。
『何の合図なんやろ……。』
おいでおいでと手招くから静かに文の側に行った。
「三津さんここで寝転んで。そっとね。そぉーっと。」
小声で入江と向かい合って横になるように指示をされ素直に従い横になった。そして起こさないようにギリギリまで近寄れと指示をする。
それから文は入江の背後に回りその背中にピッタリとくっついた。
「九一さん起きてっ。」
耳元で囁やけば入江の目がハッと開いた。その目の前には三津の顔があって背中には柔らかい感触と温もり。
自分の置かれている状況を把握した入江は絶叫と共に飛び起きた。
「攻められるの好きとか言う癖に何で慣れちょらんそ?」
文は悪びれる様子もなくにまにまと笑いながら膳を挟んで正面でむくれる入江の顔を覗き込む。
「煩い。」
入江はふんと顔を反らした。文にかかれば入江もおもちゃになる。
「三津さんも一緒になって朝から何しよるんよ。」
流石に私でも怒るわと味噌汁をすすった。
「朝がアカンのやったら夜はいいんですか?」
「ぶふっ!」
味噌汁を吹き出した入江を文はけらけら笑った。
「夜もいけん!こんなくだらん遊び禁止!」
「何言っちょるん。三津さんも居る今,積年の恨み晴らさんといつ晴らすそ?」
文はふふふと笑って入江を見つめた。
『やっぱり恨みあるんや……。しかも高杉さんだけやなくて多分四人全員……。』
「九一さん,今までの悪事謝った方が身の為ですよ?」
「知らん!私は何もしちょらん!」
「はあ!?私の部屋に春画撒き散らしちょったんどこの九一さんやったかいねぇ?」
「文ちゃん!」
心当たりのある入江の九一さんは腰を上げて咄嗟に文の口を塞ぎにかかろうとしたがそんなものひらりと交わされた。
「まだまだあるけど……三津さんの前で言ってもいいそ?それとも毎日少しずつ報復受ける?」
三津には文の姿が裁きを下す閻魔様に見えたがこれは入江が悪いので助ける義理もない。
『ここどこやろ?』
布団に寝かされ視界には天井。
『俺はまだお前の言う事信じちゃいねぇからな。』
そうだ捕縛されて拷問を受けたんだ。ここは屯所だ。
視界には土方が映り込み,あの鋭い目で見下ろしてくる。botox小腿
その厳しい表情がどんどん迫ってくる。
『土方さん?』
唇に何か触れる。触れて何度も何度も貪ってくる。
土方さんが口付けしてるの?私に?
するとごつごつとした手が脚を撫で上げて着物を乱してくる。
ぞわりと気持ち悪い感覚が全身を駆け抜ける。
何をしてるの?
何でこんな事するの?
私はこんなの望んでない。
やめてよ……。
やめてよっ……。
やめてよっ……!!
『……好きなんだ。』
「うっ……あぁぁぁぁっ!!」
奇声を上げれば土方は消えていなくなった。
「三津っ!三津っ!落ち着けっ!」
両肩に強い力を感じてハッと目を見開いた。
「え……?吉田……さん……?」
視界に映ったのは吉田だった。悲しげに歪んだ顔で手を伸ばして来た。
その両手に頬を挟まれビクッと体が跳ねた。
「大丈夫だよ……。俺が居るから……大丈夫。」
頬に感じた温もりにこれ以上ない安心感を覚え,じわじわと熱いものが込み上げてくるから瞼を閉じた。
「怖……かた……。怖かっ……た……。」
「うん……怖かっただろう……。」
閉ざされているのに目尻から流れ落ちる涙を吉田の指が丁寧に拭い去る。
「三津が安心するまでずっと居るから。触られるのが怖ければ拒否していい。突き飛ばしても引っ叩いても構わない。」
三津は小さく首を横に振った。
「吉田さんが居て……安心……。」
掠れた声でどうにか言葉を吐き出した。
『昨日の夜のは……夢やったんかな……。
土方さんが私を……。好きって言った。』
その言葉が何度も何度も胸を打ちつけて来る。
夢じゃなかった。
ほら,目を閉じてるのにそこに浮かんでくるあの顔。
苦痛に歪んだあの顔。
堪らずに目を開けた。その代わりに映るのは柔らかな吉田の顔。
「何か食べれそう?」
「あんまり……食べたくない。」
「分かった。白湯ぐらいは飲みなよ。取ってくる。」
吉田が離れて静かな部屋に取り残された。三津はゆっくりと体を起こした。風邪を引いた訳でもないのに何でこんなに重いのか。
正直途中から何も覚えていない。何度も意識を失いかけた。
その現実から目を反らしたくて。
土方から与えられる感覚を味わいたくなくて。
声も必死に押し殺した。
忘れたい。忘れたい。そう思うほどあの声が追ってくる。
“欲しいんだよ。お前が。”
『何であんな事言ったん?どう言うつもり?
こんなんされた私の事……小五郎さんは嫌いになったやろか……。』
一緒に帰ってくれる?なんてワガママを言った挙句,一人は駄目だと忠告してくれたのに聞かなかった。
極めつけがこの様だ。
『会うのが怖い……。』
どんな顔して合えばいいのか。
怖かったと泣きつけばいいのか?
いや,一人で飛び出した故の自業自得。
『幾松さんやったら……上手く甘えはるんやろうなぁ……。』
「どこか痛む?無理して起きなくてもいいのに。」
感傷に浸っていると盆を手にした吉田が戻って来た。
「転んで擦りむいた所が痛い……。」
「そうか。それなら後で玄瑞に塗り薬を貰ってくるよ。」
布団の脇に腰をおろして自分の横に盆を置いた。
「三津が俺を拒絶しなくて良かった。俺でも触れさせてもらえないならどう包み込めばいいか分からなかった。」
飲みなさいと湯呑みを突き出した。
「あ……。確かに……。」
吉田には抱き締められても平気だったが怪我をしてないか確認しようとしてくれた久坂には体が拒絶を示した。
吉田には安心感を抱いている。
あの場から逃げるのに必死で吉田と乃美を見つけた時には助かったんだと分かって感情が爆発した。
湯呑みを見つめてその時を思い出していると目の前に手のひらが飛び出して来た。
「え?」
斎藤と通ったおかげで道順は完璧。
がらの悪い浪士にも出くわすことなくもうすぐ診療所に到着する。
何だ一人でも平気だ。気分を良くしてすぐに問題発生。
診療所の前で男二人がユキに詰め寄ってるじゃないか。
「ユキさん!」
これは一大事,botox小腿 三津は全力で助けに向かった。
「ちょっと何してるんですか!?」
後先考えずにユキと男の間に割り込んだ。
上からじろりと睨まれたが土方に比べたらどうって事ない。
「お前もこいつの仲間か。」
「この子は患者さんです!それにさっきから何度も申し上げてますけど,私は患者さんの事を他言したりしてません!」
「じゃあお前の親父か?この診療所の世話になってから仲間が随分と新選組にやられてんだがなぁ。」
勢いで割り込み事情を全く把握出来てなかった三津だが,何だか他人事じゃないと感じた。
『まだよく分からんけどこの人らも新選組に恨みがあるのは間違いなさそうやな…。』
「ゆっくり話聞かせてもらおうじゃねぇか。
こっちは仲間殺されてんだよ。それともお前の命で仲間の無念を晴らしてくれんのか?」
ぎらついた目が二人に迫る。怨みのこもった目。こんな目に睨まれるのは何回目だか。
三津は小さく溜め息をついて真っすぐにその目を見つめた。
「だったら,私の命差し上げます。
ユキさんは傷付いたり病に苦しむ人の為に一生懸命な人です。
この診療所に必要な人だから手は出さないで下さい。」
迷いのない目を向けたまま,ゆっくり跪いた。
「これであなた方の気が済むなら…亡くなった方の無念が晴れるならどうぞ。」
胸の前で手を合わせて静かに目を閉じた。
気持ちは穏やかだった。悔いもなかった。
「自ら命を差し出す馬鹿があるか!」
その怒声に三津は目をぱっちり開けた。
腕を組んで仁王立ちの斎藤が,今まで見たことない恐い顔で三津を睨んでいた。
「あんたらの相手なら俺がなろう。」
「何だてめぇは。」
男達の注意が斎藤に逸れた。
その隙に三津はユキに引っ張られて,遠巻きに様子を見守った。
「新選組,斎藤一。」
名前を聞いて男達はすぐさま刀を抜いた。
「お前らの仲間を斬ったのは俺だ。」
わざわざ相手を挑発する言葉に,三津はひやひやしながら手のひらを握り締めた。
「この野郎!」
三津の心配を余所に,斎藤は雄叫びを上げながら斬りかかった男をあっさり切り捨てた。
「ひっ…。」
表情一つ変えず,残された一人にじりじりと迫ると,
「う,うわぁぁぁっ!」
男は三津とユキの方を向き,刀を振り上げながら走り出した。
「きゃあぁぁ!」
二人は抱き合いながら,固く目を閉じてしゃがみ込んだ。
「…っさせるかぁ!」
刀同士がぶつかる音が響いて,その後すぐにどしゃりと地に臥す音がした。
「間に合ったぁ…。」
三津が恐る恐る片目をうっすら開いて見ると,胸に手を当てて大きく息を吐く総司の姿。
「何であんたが居る…。」
いいとこ取りされたのが若干悔しくて,斎藤はじっとり睨んでやった。
「え!?いやそのぉ…。」
しどろもどろな総司を一瞥して三津とユキに歩み寄った。
二人に手を差し伸べて立ち上がらせて,着物の砂埃を払ってやった。
「お三津ちゃん!簡単に命あげたらアカンよぉ…!
何の為にうちに勉強しに来たん?」
ユキは三津の体をぎゅうっと抱き締めて,無事で良かったと涙を流した。
「無事を喜んでる所悪いが,三津…。勉強って何だ?」どういう事か説明してもらおうか。
斎藤の冷ややかな目を直視出来なくて,三津の視線は宙をさ迷う。